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根管治療について

牛窪 敏博
日本歯内療法学会認定医
デンツプライ三金インストラクター
AAE会員
医療法人 晴和会 うしくぼ歯科理事(http://www.ushikubo-dental.com

(主な著書)
「根管系封鎖型材料MTAの臨床応用」2000年クインテッセンス
「歯科用小型X線CTの根管治療における有用性」2005年歯科臨床研究

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14.普段は痛まないが、治療をする度にチクチク痛むのはどうして?

 根っこの治療(神経治療)をした後に、次回診療中に治療用の器具で根っこの先を触られてチクチク感じるのは、正常な反応を示す神経でありませんが、一部神経がまだ少し取りの残っている場合、もしくは器具が歯根膜を刺激しているのかもしれません。普段の日常生活で痛みが無いので、このような場合は麻酔下で充分洗浄を行い適切な器具操作でレントゲン写真を撮りながら専用の装置を併用して使用すると安全に且つ確実に治療が可能になり、そのような痛みは無くなりますのでご安心下さい。

15.歯の中は細かいのに、神経の治療って確実に出来ているの?

 その通り、歯の中は大変細かく肉眼では確実に全てを把握することはできません。ですから、私たち専門家はマイクロスコープを使用して確実に見える所まで治療を行います。ただ、マイクロスコープと云えど万能ではありません。根っこの形状が比較的直線的な場合は根の先まで見えますが、奥歯で根っこの先が曲がっている場合はその手前のまでしか見えません。

 私たち専門家はマイクロスコープを使って歯の全体の上部約3分の2を通常の治療でカバーし残りの3分の1を外科的に歯の根の先の方からアプローチしカバーします。このようにして歯牙全体の治療を可能にしています。ただ、人間の行うことですから100%ということではありませんが、かなりの高い確立で治療を可能にしております。ちなみに、このマイクロスコープではバイ菌やウイルスは見えませんので悪しからず。

16.根っこの治療をすると歯が悪くならないのですか?

 術前の確実な診断があれば多くの場合そのようなことはありません。もちろん、無菌的な治療を確実に行っても100%ではありません。大きな虫歯で神経を除去しないと行けない場合の成功率は約90%〜95%で、再度の治療(根っこの先に膿みの袋がある場合等)は今まで何回治療を受けたかにもよりますが、約70%〜80%くらいです。この数字も専門家が徹底的な無菌処置を行った結果での事です。いい加減に診断して治療を行うとこのような数値には至りません。基本的に歯は、神経が存在する状態が一番良く、私たちは虫歯やその他の再治療の必要性の為に治療を行うだけであって、むやみに治療は致しません。またそれ以外に予期せぬ変化(ストレスの増加に伴う喰いしばり等)によって歯牙そのものが破折することがあります。これは根っこの治療というよりも噛み合わせそのものに問題がありますので、根っこの治療だけではなく全体のバランスを考えた治療を受けて頂かないと行けません。

 せっかく根の治療をしっかり行っても噛み合わせがいい加減では本末転倒です。また、治療が不可能な歯牙の治療を長く続けても良い結果は生みません。歯牙そのものの所有権は患者様にありますが、保存不可能であるならば、担当医と良くお話しして頂き治療の方向性を決定して頂きたいです。不必要な治療を始めても、結果はすでに明らかである事をお忘れなく。まさしく、時間とお金を無駄にする事になり、時には精神的苦痛も伴いかねません。先ずは、専門家の意見に耳を傾けて下さい。

17.根っこの治療で歯の中を無菌にできるの?

 基本的には無理です。ただ、根っこの治療では無菌的に処置を行いますが(ラバーダム処置)、根っこの中が無菌になる事は不可能と申しますか、それを実証する事はかなり難しいです。細菌検査をといっても、我々が行う検査レベルでは結果がたとえ無菌であったとしても、それが100%信用できるというものではなく、治療間の仮封や検査のサンプリングの問題等があり不確実です。

 ですから、私たちは根管内(根っこの中の事)を高レベルで消毒することに専念し、根っこの中がバイ菌の発育する土壌にならないようにし、仮にバイ菌が存在していたとしてもそれを封じ込める事により死滅させ根管内を再感染の場にすること無く確実に充填し目的を達成します。

18.根っこの洗浄はどのようにするの?

 洗浄には2種類または、3種類の洗浄液を使用致します。最も多く用いるのが次亜塩素酸ソーダと申します洗浄液で、歯の中にある有機質を溶解しながら消毒を行います。その他に、EDTAと申します洗浄液で根っこの中にある無機質と削り粕を洗い流す為に使用します。主にこの2つの洗浄液を使用しますが、過酸化水素水も最終的なお薬を充填する前に用いる事があります。これら全ての溶液は低濃度のものを使用しますが、それでもお口の中に漏れると危険ですので、ここでもやはりラバーダム防湿が必要となってきます。その他にも歯科医によっては、酸性水やただの水道水だけで洗浄を行うと言う方もおられるようですが、これでは高レベルの消毒が可能になりません。

 それでなくても仮封というバイ菌から汚染する危険な機会が少なからず存在するにもかかわらず、ただの水だけでは到底太刀打ちできないのはご理解頂けると思います。しかし、いまだに今までの経験上問題が無いので、洗浄は水だけで大丈夫だと考える歯科医もいます。困ったものですが、これも事実です。また、バイ菌を排除する為の洗浄にも原則がありますが、これを無視して第三者の経験の受け売りで適当に行われている場合がありますので要注意です。

19.最終的なお薬はどのように詰めるのですか?

 歯科医または専門家によって異なりますが、大きく分けて2種類の方法(側法加圧充填と垂直加圧充填)があります。緊密に充填(お薬を詰める事)できればこの2つに有意差はありません。重要な事は、組織をあまり刺激しないセメントを用いて、ガッターパーチャーと申します樹脂状のお薬というよりもポイントですが、これを歯の根っこの中に緊密に詰める事です。ちなみに私の場合は、垂直加圧充填法を用いております。

20.根っこの治療の後は、被せものをしないといけないの?

 根っこの治療が終了しても、この後被せものをきちっとしておかないと、歯牙破折をおこしたり咬み合わせが狂ってきます。例え1本の治療でも咬合を確実に合わしておかないと、いろいろな障害がでてきます。人間にとって咬み合わせは大変重要で、少し高さが合わないだけで頭痛、肩こり、めまい、顎関節痛、ヘルニアが起こる事があります。根の治療は基本治療で、お家で例えますと基礎工事と同じです。見た目はあまり分からないが非常に重要です。

 手抜き工事をしても、はじめは何も変わった事は起こりませんが、住んでいるうちにいろいろとガタが出てきます。床が傾いてきたり、ドアが開閉時に閉まりにくくなったり、シロアリで柱が喰い尽くされたり、ともすれば小さな地震でも倒壊するかもしれません。このように基礎工事は手を抜くと、取り返しがつきません。ただその上に建つ家自体も精密に作らないと、雨漏りがしたり屋根が落ちてきたり、壁に皹が入り、家自体のバランスが崩れて安心して住む事が出来ません。

 これが、被せものをする治療(補綴治療)だと思って下さい。この部分の治療もできれば、咬合を良く理解しておられる先生の治療を受ける方が安心してゴールに辿り着けると思います。

21.いろいろと説明を聞きたいけれど、嫌がられない?

 専門家は術前にカウンセリングを行ってから治療に入ります。私の場合は、だいたい1時間のお約束を頂いて術前のレントゲン写真を基に治療歯数、治療期間と回数、概算費用、治療中治療後に起こりうる症状とアクシデント、予後の追跡調査の必要性等をご説明し、同意して頂ければさらに詳しい診査を行い、次回から治療開始となります。

 緊急を要する方は適宜、応急処置を行い、その後再度カウンセリングとなります。

 当然、我々も人間ですから相性が合う、合わないという問題は必ず存在すると理解しております。我々が好意的な方であると認識しても、患者様の方で我々の事をそのように思わない時もありますし、その反対もあります。これは、治療前だけではなく治療中にも、そして治療後もあり得る事例です。ですから事前のカウンセリングを充分に行って双方が納得した上で治療を開始しないと、治療上での問題が発生しお互いが嫌な思いをするだけです。ただ専門家は特に難症例を取り扱う頻度が多く得意ですが、人間性の難しい方は不得意です。

信頼関係を築くことができずに人を疑うことばかりする方、お話を理解せずに合理性のない要求をただ言いたい放題言うだけの方、また我がまま放題で他人の過失等を責める事しか出来ない方がいらっしゃいますが、このようなタイプの患者様は大変不得意です。出来る事と出来ない事があります。現在、歯科医院は星の数ほど存在しますので、申し訳ないのですがこのようなタイプの方には御自身で地道に相性の合う歯科医を探して頂くほかありません。また、保険診療でカウンセリングをして頂けるかどうかは医院によってことなります。

22.妊娠中や授乳中での受診は問題ありませんか?

 妊娠中の場合、安定期に治療を行なう事が出来ますが、できれば応急処置に止めておかれる方がよろしいかと思います。特に精神的に不安定でもありますし、投薬に関しましても細心の注意を払わなければなりません。安心して治療を受けて頂く為にも、出産後少し落ち着かれてからじっくり治療を受けて頂く事をお薦め致します。基本的に出産計画がありましたら、それ以前に治療を完了して頂くようお願い致します。授乳中は投薬の問題がありますが、治療計画を事前に打ち合わせしておけば、搾乳して保存したお乳をお子様に使用することが出来ますので治療可能です。

23.高血圧や糖尿病等の全身疾患がある場合、根っこの治療を受ける事はできますか?

 全身的疾患がある場合、現在の状態に関してかかりつけの医師にアドバイスを求めます。医科の先生の中には、歯科治療にあまり詳しくない方もいらっしゃるので、連携をしっかりとらないとスムーズに治療が出来ません。ですから、担当歯科医師に今までの全身的な既往を治療前の問診やカウンセリング時に出来る限り細かくお伝え下さい。患者様の中には、外来で歯科治療が出来ない方もいらっしゃるかもしれません。

 この場合、大学病院や病院歯科で治療して頂かないと行けませんが、これもお体の為に致し方ありません。それ以外の場合は、医師のアドバイスのもと麻酔、投薬に関して慎重に計画し治療に当たることが可能ですのでご安心下さい。

24.治療をした歯と何もしていない歯では、何か感覚が違うのですが?大丈夫でしょうか?

 根っこの治療をした歯は、少し響く感覚が残る場合がありますが、日常生活において痛みや不快感がなければ問題ありません。仮に、お一人の患者様で複数歯の根っこの治療を受けたにもかかわらず、全く響かない歯もあれば少し響く歯がある可能性もあります。治療内容・治療部位や治療開始前の症状の有無、歯牙そのもの厚み等により差がありますが、基本的には大丈夫です。術後、あまり気になるからと言って御自身で歯を触りすぎると良くありませんから、どうしてもという場合は担当医にお申し出下さい。必要であれば精査して参ります。

25.最新治療って何ですか?

マイクロスコープ、歯科用コーンビームCT、ニッケルチタン製治療用器具が挙げられると思いますが、これ以外に根っこの治療に使用する生体親和性のあるセメント(MTA)があります。いろいろなケースに応用されておりまして、今までの材料に比べてかなり良い結果が全世界から報告されています。3Mixというお薬を、歯の神経を保存または神経治療に使用される先生がおられますが、欧米では使用する先生が殆ど皆無に等しく、耳にしません。このお薬にご興味のある患者様はその先生方に一度お問い合わせ下さい。ちなみに、私は使用しておりません。また、最近ではピエゾサージェリーという器械が外科的治療に応用されつつあります。今後は期待できる器機の一つでしょう。

26.根っこの治療以外に歯科の専門家はいらっしゃるのですか?

今まで根っこの治療とばかり表現して参りましたが、最後に正式な表現でご説明したいと思います。根っこの治療の専門医(以後、歯内療法専門医とする)以外によく知られているのが矯正専門医、口腔外科専門医、歯周病専門医、小児歯科専門医、補綴専門医がありますが、現在のところ国が認めている専門医は矯正専門医、口腔外科専門医、小児歯科専門医、歯周病専門医です。実は、歯内療法専門医、補綴専門医はまだ認可はされておりませんが、各学会レベルで認定医や指導医として認定しております。今後は認められる予定です。世界のトップを走るアメリカでは上記の専門医が全てかなり以前から存在しており、一般開業医と専門医が上手く連携をとり患者様の治療を円滑に行っております。

27.今後の日本の歯科治療はどのようになるのですか?

今後の日本の進む方向性はアメリカのようになることなのかは分かりませんが、その可能性は充分あります。現行の保険制度がいつまで続くかにもよるでしょうが財源がない以上、近い将来もっと大きな変化があるはずです。私自身が考える歯科治療は、お一人の患者様に対して専門医が各分野で担当させて頂き、口腔内を長期維持安定させる為のお役に立てることが必要であると考えております。今までは、一人の歯科医師がすべての治療を行ってきましたが、やはりそこには無理があります。中には、全て専門医レベルの治療が出来るとおっしゃる先生もいらっしゃるかもしれませんが、本当に患者様の事を考えるとそうではないと思っております。当然、限られた期間で結果を出すのがプロですが、保険診療のように短時間ですぐに次の患者様を診察するスタイルは一見効率的のように見えますが、充分な診査診断、診療時間、カウンセリング等を掛けることが出来ず双方ともフラストレーションが募る一方です。また、あれもこれもと患者様の全ての治療を一人で行ううちに、必ずどこかで歪みが生じる筈です。それが、事故に繋がるかもしれません。ある日本の野球チームでのことですが、全員がほとんど皆ホームランバッターでしたが結果は勝てずにさんざんでした。勿論、ピッチャーもキャッチャーも盗塁が得意な選手もヒットをよく打つバッターも必要です。適材適所ということでしょうか。現在私は、3人でチームを組んで治療を行っております。補綴担当、歯周病担当(インプラントも担当)、歯内療法担当に分かれて、お一人の患者様の診査診断から治療計画に至るまでを3人の専門医がディスカッションを行い治療のゴールを決定し治療に当たっております。内容によっては、矯正専門医、口腔外科専門医とも連携をとります。このようなスタイルで診療しますと患者様御自身でセカンドオピニオンをこのチームの中の歯科医から得ることが出来るので、双方納得の上での治療が可能になります。このスタイルが正しいかは分かりませんが、ただ私たちは常に患者様と伴に歯の価値観と治療のゴールを共有したいのです。

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