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根管治療について

牛窪 敏博
牛窪 敏博
日本歯内療法学会認定医
デンツプライ三金インストラクター
AAE会員
医療法人 晴和会 うしくぼ歯科理事(http://www.ushikubo-dental.com

(主な著書)
「根管系封鎖型材料MTAの臨床応用」2000年クインテッセンス
「歯科用小型X線CTの根管治療における有用性」2005年歯科臨床研究

根管治療2ページへ

1.はじめに

 皆さんは今までに何度も歯科医院に行かれたことがあると思いますが、また中には今までに受診したことが無いという方もおられるかもしれませんが、歯科医院のイメージとはどのようなものでしょうか?痛みや詰め物がとれたから仕方なしに訪れるところ、はたまたいくら治療にお金をかけてもまた悪くなるから勿体無いと思われる方が大半ではないでしょうか。

 おまけに、治療されると痛い思いをすると言うアドバイスを受けたり、実際そのような経験をして2度と行きたくはない所で、考えたくもないとおっしゃる方もおられるでしょう。しかし最近では健康志向や美白ブームで、あまり好まないが訪れる方も少しずつ増えている傾向にあります。患者様の恐怖心や安心感を得る為に美容サロンやカフェバーのようなクリニックも登場しています。待合室にはアロマの香りでリラックスして頂き歯科医院特有の匂いを排除し、診療台には歯を削る道具が目に入らぬようにし、モニターにて診療に関するご案内、説明や娯楽ビデオ、テレビと云ったサービスを行う所が多くなっております。このように、我々は確実に患者様に歩み寄る努力をして来ております。しかし、患者様に技術の評価を頂くシステムは未だ確立されておりません。

 技術を評価することは我々歯科医師でも困難な場合がありますが、大半は可能とされています。ただ、患者様に正確に伝えることは難しいこともあり、ジレンマを感じるところです。特に根っこの治療(根管治療)は目には見えない部分であり、良し悪しはレントゲン写真での比較評価と臨床症状でしかありません。この事が、根管治療を蔑ろにされる要因となっていると言っても過言ではありません。ここ数年のインプラント治療の需要の増加に伴い、正確な診査診断が行われること無く根管治療が必要な歯牙で治療をすれば抜く必要が無い場合でも抜歯を余儀なくされる傾向が実際のところ増えております。

 そこで、根管治療とはどのように診査診断され治療が行われるのかを患者様の立場に立ってご説明させて頂きたいと思います。

2.1回にかかる治療時間はどれくらいですか?

 基本的に専門家の治療は、1回に頂く治療のお約束で1時間の治療時間を予定しております。ただ、外科的な処置や複雑な修復処置が必要な場合は1時間半から2時間必要となります。1時間の治療時間の中で術前術後の御説明に10分から15分費やしますので、実際にお口を開けて頂く時間としましては30分もしくは40分ぐらいです。お口が開きにくい方や、顎の関節に少しの障害がある方には時間を短くしたり、それに配慮した処置を行います。

3.治療後に痛みや腫れは伴うのでしょうか?

 術後の痛みに関しましては術前の症状や処置内容、患者様の体質により異なりますが、術後の不快感(痛みや腫れ)は伴うと思って頂いたほうがよいと思います。術後のお痛みが軽い場合とそうでない場合は予測がつく時とつかない時がありますので、基本的には痛み止めのお薬を処方することが多く、抗生物質はあまり処方することはありません。

 根っこの先の部分の感染の度合いが多い場合や全身的に悪寒発熱等の症状を伴う場合は、抗生物質を処方することがあります。また、お痛みの持続もお人により異なりますので、処方の仕方やお薬の種類も変わってきます。勿論、術前にお薬のアレルギーに関しまして問診しておりますが万が一、何か症状がありましたら必ずその内容を担当医にお伝え下さい。処方を変更したり、処置内容も再度検討する必要があります。また、お薬を飲んでも痛みが止まらなかったり急な腫れが出現した場合には、すぐにお連絡を頂くか来院して下さい。お薬に関しての服用量の変更または応急処置を行う必要があるからです。

 痛くない治療が良い治療とは限りませんし、痛い治療が悪いとも限りません。ただ、多くの場合はこのようなことはあまり起こりませんのであまりご心配をする必要はありません。

4.治療には麻酔をしますか?

 多くの場合、麻酔をいたします。患者様に術中術後の不快感を最小限にする為です。また、表面麻酔と言いまして、針のある麻酔をする前にこれを行いますと殆ど痛みもなく麻酔が行えます。ただ、術前に麻酔の既往を伺い、使用可能かどうかは必ずチェックいたします。また、麻酔に対して抵抗感のある方はお申し出下さい。
麻酔後はお口の周りが麻痺しておりますので、術直後の飲食とくに熱い飲み物等はご注意下さい。唇や頬を咬んだり、やけどをしても気がつきません。

5.レントゲン撮影に不安があるのですが?

 根っこの治療にレントゲン撮影は必要不可欠です。レントゲン写真なしで診査診断はありえません。術前術中術後及び予後調査と何回か撮影を行います。皆さんは診査や治療の際のX線被爆をかなりご心配されていると思いますが、実は私たちは自然界の中でも被爆していることをご存知でしょうか?大気中や土壌からX線という波長が発生し、我々は自然に被爆しているのです。紫外線という言葉はよくお聞きになる筈ですがX線も同じように存在しております。

 根っこの治療の為に、歯科医院で行うX線撮影による被爆は、自然被爆の百分の一程度です。私のクリニックではデジタルX線装置で撮影をしますので、さらにその十分の一となり、つまり自然被爆の千分の一となるわけです。診査や治療の為のX線被爆と生体への為害作用を比較した場合、我々が行う行為に優位性がなければ治療そのものが成り立ちません。ただ、むやみに無駄な撮影は避けるように心がけておりますので、どうかご安心下さい。

6.治療にはどのような方法があるのですか?

 大きく分けまして、はじめに(第1項)ご説明しました通常の治療と外科的な治療があります。通常の治療で治らなかった場合や、処置を行う歯に被せもの(差し歯等)があり、それを外すことが出来ない場合(患者様のご希望で)に外科的処置を行います。

7.外科的な処置とはどのようなことをするのですか?痛みや腫れが心配なのですが?

 麻酔をした後、歯肉を切開し根っこの先にある膿みの袋とその根の先約3mmを取り除き、その切除した根の先に反対側からお薬を詰め歯肉を元の位置に戻し縫合します。術後には飲食の注意事項、ブラッシング方法、お口の洗口方法ご説明致します。処置の翌日に洗浄をかねて診察させて頂き、問題が無ければ4〜5日で抜糸をし、その後予後観察に移ります。多くの場合、術後6ヶ月から1年単位で観察する必要があります。これは通常の治療でも同じですが、根の先の部分が治癒(治っているかどうかの確認)しているかを判断するのにこれぐらいの期間は必要だからです。術後の痛みや腫れはお薬で抑えますが、これも処置範囲や処置内容の難易度そして患者様の抵抗力により差があります。専門家が行う手術はマイクロスコープ(手術用実体顕微鏡)を使用して精密に処置を行い、必要最小限の外科的侵襲に押さえることが出来ますのでご安心下さい。

 また、傷跡も殆ど残りませんので、たとえ前歯でも審美的な問題は生じません。ただ、術後の反応がきつい場合は投薬を増量することもあります。処置の程度としましては、抜歯ぐらいと考えて頂いて結構です。

8.治療費はいくらかかるのですか?

 健康保険での治療と自費での治療では費用が異なります。一般的に保険内では一歯数千円でしょうか。治療部位や内容、治療歯数にもよりますので、詳しくは担当医にお聞き下さい。ただ専門家は自費診療を行っている場合が多く、医院や専門家により費用も異なりますので、事前にお問い合わせ頂いてから受診されることをお薦め致します。安くて近くて短時間の治療は理想でしょうけれど、反対に不安と困惑が増大する時もあります。

9.一般の歯科医と専門家では治療がどのように違うのですか?

 根っこの治療(神経治療)は一般の歯科医師でも行うことが出来ますが、専門家は一定期間のトレーニングを受け卓越した技術で治療が可能です。治療回数、治療時間及び期間も一般医と違いがあります。また、治療には必ずマイクロスコープを使用し、肉眼では見えない部分までを精査し、必要であれば歯科用コンパクトCT(X線被爆量は医科用の数千分の一)を応用し3次元的に診査診断、治療を行います。また、常に継続的学習を行い最新の情報を基に科学的根拠のある治療を実現します。勿論、費用面でも異なります。

10.何回治療しても腫れるのですが、何か問題が起こっているのでしょうか?

 多くの場合、感染が根っこの先にいまだ存在するか、元々神経が入っていた空間に何か障害が起こっていたり、感染そのものが根っこの先から逸脱し根の外側に及んでいることがあります。また、最近では何度も治療を行うことにより歯牙そのものが薄く脆くなり、亀裂が入っていたり破折を起していることも多く報告されています。歯周病との合併症もありますので、精査が必要です。

11.治療後、痛みが取れないのですがどうしてですか?

 治療に際して、使用する薬剤(歯の神経を固定する薬や壊死させる薬:ホルムクレゾール、ペリオドン)の副作用や乱用、使用器具の操作方法の誤り、一部神経が取り残っている場合等が挙げられます。基本的に専門家は薬剤としましては水酸化カルシウムを使用し、ホルマリン系薬剤は使用しません。このような場合は無菌的処置の下、充分洗浄し刺激を加えることが無いように水酸化カルシウムを応用し経過観察を行います。使用器具の誤りによる障害が存在する場合は、無菌的にその部分を修復した後同じく洗浄し経過観察します。ですから、このようなケースの場合は治療回数や期間が自ずと掛かります。また、元々の痛みの原因が歯牙でないことも考えられますので、この場合は鑑別診断が必要です。

12.歯の神経治療をしたのに痛むのはどうしてですか?

 歯の神経が完全に除去されておれば問題はありませんが、一部取り残しがあったり、歯の根っこの周りにある歯根膜というクッション代わりの繊維が炎症を起していることが考えられます。それ以外にも前の項でご説明したようなことも関与しています。皆さんの中には、歯の神経を取ると痛みは無くなる筈だと考える方が大半だと思います。おっしゃる通り、一般的にはその通りなのですが物を咬んだ時や接触する感覚は先ほど少し触れました歯根膜が司ります。歯の神経は外界からの攻撃こと、冷たい刺激や暖かい刺激を受けると痛みとしてとらえます。刺激を早く中枢に伝える神経繊維とゆっくり伝える神経繊維がありますがどちらにしても痛みとしかとらえません。この繊維がなくなっても、歯根膜が存在する限り接触感覚はなくならないのです。

 ですから、術後の痛みはいろいろな原因が考えられますから正確に痛みの診断を行わなければ間違ったゴールに辿り着く可能性があります。

13.現在根っこ治療の途中ですが、痛みが無いのでこのまま放置しておいてもよいでしょうか?

 治療を途中で中断するのは、最も危険なことです。せっかくの今までの苦労が水の泡です。根っこの治療は最終的なお薬を詰めて、その上に被せものをして完成だと思って下さい。最終的なお薬を詰めて終わりだと思われるかもしれませんが、実はそうではなくて、被せものを行うことにより根っこの先に感染が及ぶこと無く完全封鎖をすることにより、歯はご機嫌良く機能します。

 また、特に最終的なお薬(ガッターパーチャーと言う樹枝状のお薬)が入っていないともっと大変です。お口の中は、バイ菌が多く存在しますから、仮の詰め物でふたをしていても数日間でバイ菌は簡単に歯の中に入ってきます。それを防ぐ為にも歯の中に水酸化カルシウムを入れていますが、それでも長くは持たず感染は起こります。

 ですから、症状が緩和すれば出来る限り早く最終的なお薬を詰めていく必要があります。そして、被せもので仕上げです。何度も申しますが、治療の途中中断は禁物です。それは、患者様御自身でバイ菌を御自身の歯の中で培養しているのと同じことです。考えただけでも恐ろしいでしょう!

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